足の捻挫(足関節捻挫、ショパール関節捻挫、リスフラン関節捻挫)

概要

足の捻挫はとても多い疾患で、主に「足関節」「ショパール関節」「リスフラン関節」で起こるが、中でも足関節の外側側副靭帯(前距腓靱帯・踵腓靱帯)に多く発生する。
足関節の外側側副靭帯3度損傷(完全断裂)に対して、これまで手術治療が積極的に行われることもあったが、最近は保存治療が見直され、その治療成績も良好である。

原因

段差やジャンプの着地などで足を捻って発生。捻る方向は、“内返し(内側に捻る)”と”外返し(外に捻る)”があるが、”内返し”がほとんどである。

症状

歩行痛、屈伸すると痛い、腫張、血腫(内出血)、足がグラグラするなどがある。
靭帯の損傷の程度で、以下のように損傷程度が決められる。
・1度:靭帯が伸びる、あるいは一部断裂したもの。
・2度:広範囲にわたって断裂したもの。
・3度:完全断裂。

検査

X線検査では靭帯は明確に写らず、臨床所見徒手検査が基本になりほぼ判断できる。さらに、軟骨損傷の疑いなどがある場合はMRIや関節鏡検査などが行われる。
一方で、MRIでも異常を明確に写すことができないこともあり、問診・臨床所見などが重要。

治療

1)足関節捻挫
“1度・2度損傷”は「保存治療」が行われるが、“3度損傷”では年齢・性別・活動性などを考慮して、手術治療・保存治療どちらを選択するかを検討しなければならない。
損傷の程度に応じて、患部の固定・靭帯再生の促進・筋肉の柔軟性の獲得・痛みの軽減などを目的に、テーピング、ギプス固定、装具固定、アイシング(冷却)、低周波治療、温熱療法、手技療法、筋力増強訓練、ストレッチングなどを行う。3度損傷に対しても手術をしなくてもよく治るため、上記のようなことを考慮した上で保存治療を行う。   
2)ショパール関節捻挫・リスフラン関節捻挫
一般的に予後は良いことが多いが、足のアーチ(土踏まず)の動き・作用が関与することもあって、症状軽減に難渋することもある。そういった場合は、上記のような治療に加えて足底板なども併用して治療する。
足首の痛み 足首の痛み 足首の痛み

足関節の腱炎(腓骨筋腱、後脛骨筋腱、前脛骨筋腱)

概要

足関節の周囲には、一般によく知られるアキレス腱のほかに、腓骨筋腱・後脛骨筋腱・前脛骨筋腱などの腱があり、炎症を起こし痛むことが多い場所である。腓骨筋腱は外果の後方から下方、後脛骨筋腱は内果の後方から下方、前脛骨筋腱は内果の前方にある。

原因

ランニング・ジャンプ・ウォーキングなどスポーツや長時間の作業で、これらの腱に負荷がかかって炎症を起こし痛みが生じる。シューズ、路面、下肢のアライメント(X・O脚、回内足、扁平足・ハイアーチなど)など、いろいろな要素が関与する。

症状

ランニング・ジャンプなどの運動時の痛みが多く、進行するとストレッチングや歩行でも痛む。

治療

運動を制限・休止することが原則だが、さまざまなことからスポーツ活動や作業を継続しなければならない人もおり、個人の特性に合わせて治療の方針を立てて行う。その上で、腱や筋肉の緊張緩和・痛みの軽減・血流の改善などを目的に、低周波治療・アイシング(冷却)・テーピング・装具療法(足底板)・温熱療法・筋力増強訓練・ストレッチング・手技療法などを行う。また、鍼灸治療も大変有効。

足首の骨折(足関節果部骨折、裂離骨折、骨端線損傷)

概要

足関節の果部付近の骨折は、小児から大人まで幅広い年代に起こる。骨折していても歩行可能な場合も多く、注意が必要。

原因

段差や階段で踏み違える、転倒などで足を捻った際に発生することが多い。

症状

足関節の腫張、血腫(内出血)、足がグラグラする、歩行痛などがある。

検査

骨折が疑われる場合はX線検査が行われる。しかし、骨に転位のないもの(ズレのないもの、ヒビ)、小さな裂離骨折、小児の骨端線(成長軟骨)損傷などは、骨折がX線検査では明確に分からないことがある。
したがって、X線所見で骨折が明確でない場合でも、問診・症状・臨床所見などが重要で、骨折が疑われる場合は骨折に準じた同じような処置が必要になる。
上記のようなことを踏まえた上で、問診・症状・臨床所見などを重視し経過を観察しながら治療を進めていく。

治療

手術治療と保存治療がある。
手術治療は、転位を整復出来ない場合や、整復した状態がある程度の範囲で維持できない場合に行われる。
保存治療は転位がない場合や、転位を徒手整復し、整復した状態がある程度の範囲で維持できる場合に行われる。
整復が必要な骨折は整復を行い、骨折の骨癒合の促進・痛みの軽減などを目的に、ギプス・装具固定、低周波治療、松葉杖による免荷、アイシング(冷却)、温熱療法などを行う。

次に、症状や骨癒合の状況に応じてストレッチング、手技療法、筋力増強訓練、関節可動域訓練などを行う。
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有痛性外脛

概要

足関節の内果の前下方に、足舟状骨の骨の膨らみを触れることができる。足舟状骨には、外脛骨という過剰骨(種子骨)が付着していることがある。
外脛骨が存在していても痛みがないものもあり(無痛性外脛骨)、何らかのきっかけで痛みをおこすものを「有痛性外脛骨」と呼び、小学生~高校生くらいの女子に多く発生する。(※男子も起こる)
また、足舟状骨には「後脛骨筋」という筋肉が付着し、大きな力が働く。
外脛骨は、足舟状骨との関係によって大きく3つに分類することができる。

1)外脛骨と足舟状骨が「分離しているもの」
2)外脛骨と足舟状骨が軟骨で「結合しているもの」
3)外脛骨と足舟状骨が「骨で結合しているもの」

原因

足を捻る・打撲・過度の運動などで、外脛骨と足舟状骨の結合部の軟骨・骨などが、後脛骨筋の牽引力によって、炎症・亀裂・骨折などを発生するものが多いと思われる。
下肢のアライメント(X脚、回内足、扁平足など)の異常、靴の圧迫など、いろいろな要素の関与も考えられる。

症状

足の内側の痛み、腫張、外見上も骨が隆起する、発赤、歩行や運動時の痛みなど。

治療

保存治療がほとんどで、手術治療はまれ。
運動を制限・休止することが原則だが、さまざまなことからスポーツ活動などを継続しなければならない人もおり、個人の特性に合わせて治療の方針を立てる。その上で、軟骨・骨損傷の癒合促進・筋肉の緊張緩和・痛みの軽減・血流の改善などを目的に装具療法(足底板)、テーピング、ギプス固定、松葉杖による免荷、低周波治療、アイシング(冷却)、温熱療法、運動療法、ストレッチング、手技療法、鍼灸治療などを行う。

踵骨骨端症(Sever病)

概要

踵骨の後方で痛みが起きる疾患。踵骨後方には“アキレス腱”が付着し、牽引力が働く。
成長期(10代、小・中学校生くらい)の男子に多発。(※女子にも発生する)
この年代は踵骨部に骨端線(成長軟骨)があり、完成された大人の骨と比べると力学的に弱いため傷害を起こしやすいのが特徴。

原因

走る・ジャンプ・ボールを蹴るといった繰り返しで、アキレス腱の牽引力が働いて骨端線(成長軟骨)が損傷を起こす。

症状

ランニング・ジャンプ・歩行時の痛み、痛みのために踵をついて歩けない、腫張、圧痛など。

治療

運動を制限・休止することが原則だが、さまざまなことからスポーツ活動を継続しなければならない人もおり、個人の特性に合わせて治療の方針を立てる。その上で、アキレス腱や筋肉の緊張緩和・痛みの軽減・血流の改善などを目的にテーピング、装具療法(足底板)、低周波治療、アイシング(冷却)、温熱療法・運動療法・ストレッチング・手技療法、鍼灸治療などを行う。

足底腱膜炎(足底筋膜炎)

概要

土踏まずの内側で、踵骨の足底部が痛む疾患。この場所は、足の土踏まず(内側縦アーチ)を構成する“足底腱膜”が付着するため炎症を起こしやすい特徴がある。

原因

ランニング・ウォーキング・ジャンプなどのスポーツ活動や、立ち仕事などオーバーユース(使いすぎ)によって足底腱膜に微細な断裂などが起こり、炎症を起こし痛みが発生する。
下肢のアライメント(O・X脚、回内足、扁平足など)の異常、シューズ、体重増加、硬い路面や床、柔軟性、筋力、フォームなど、いろいろな要素が関与することがある。

症状

腫張、圧痛、ランニングや歩行時の痛み、特に“歩き始めの痛み”が特徴的。

検査

触診などの臨床検査でほとんど判断できる。X線検査では通常異常はみられない。
(※踵骨棘という骨の棘がみられることもある。以前はこれに対し積極的に手術治療が行われることもあったが、現在はあまり行われなくなった)

治療

運動を制限・休止することが原則だが、さまざまなことからスポーツや作業を継続しなければならない人もおり、個人の特性に合わせて治療の方針を立てる。その上で、腱膜や筋肉の緊張緩和・痛みの軽減・血流の改善などを目的に、装具療法(足底板)・テーピング・低周波治療、アイシング(冷却)・温熱療法・筋力増強訓練・ストレッチング・手技療法などを行う。また、鍼灸治療も大変有効。

踵(かかと)の滑液包炎

概要

滑液包は、衝撃の吸収や摩擦からの保護といった、関節・腱・靱帯・皮膚などの機能を助ける重要な役割をしている。
踵骨後部滑液包は、アキレス腱が踵骨に付着する部分にある。
踵骨下部滑液包は、ヒールパッドと踵骨の間にある。
※ヒールパッド・・・かかとの皮膚の下にある脂肪組織で、衝撃を緩和する働きがある。かかとの打撲で踵骨下部滑液包とともに損傷を起こしやすい場所で、治療法は踵骨下部滑液包炎とほとんど同じ。

原因

1)踵骨後部滑液包炎
靴の圧迫や摩擦(特にパンプスやハイヒールなどかかとの部分が固い靴)、足関節の運動に伴うアキレス腱のオーバーユース(使いすぎ)など。
2)踵骨下部滑液包炎
高所からの転落、ジャンプの着地、硬い床や路面でかかとに衝撃や打撲を起こした際に発生することが多い。

症状

1)踵骨後部滑液包炎
歩行痛(靴を履いて歩くと痛む)、腫張(コブ状になることがある)、圧痛など。
2)踵骨下部滑液包炎
かかとをつくと痛む、腫張、圧痛など。

治療

1)踵骨後部滑液包炎
かかとの圧迫や摩擦の少ない靴を履くことが大切。その上で、アキレス腱や筋肉の緊張緩和・痛みの軽減・血流の改善などを目的に、テーピング・装具療法(足底板)・低周波治療・アイシング(冷却)・温熱療法・ストレッチング・手技療法・はり灸治療などを行う。
2)踵骨下部滑液包炎
かかとの衝撃の緩和・痛みの軽減・血流の改善などを目的に、テーピング・装具療法(足底板)・低周波治療・アイシング(冷却)・温熱療法などを行う。

中足骨疲労骨折(行軍骨折、ジョーンズ骨折)

概要

足の甲には、中足骨が5本ある。中足骨の疲労骨折は、スポーツで発生することが多い。
第2・3中足骨骨幹部に最も多く起こり、兵士に多かったことから別名“行軍骨折”という。
また、第5中足骨基部の疲労骨折は別名“ジョーンズ骨折”という。

原因

スポーツなどで繰り返しのストレスが骨に加わって起こる。ランニングやジャンプなどを繰り返す、陸上競技・バスケットボ-ル・バレーボール・サッカーなどでよく発生する。
下肢のアライメント(回内足、扁平足、O・X脚など)、フォーム、筋力、練習環境、シューズなど、いろいろな要因が関与。

症状

足の甲や小指の付け根の痛み、腫張、圧痛など。

検査

X線・CT・MRI・シンチグラフィー検査などがある。
また、X線検査では初期は疲労骨折があっても異常が見つからないことも多くあり、問診・症状・臨床所見などが重要。
上記のようなことを踏まえた上で、問診・症状・臨床所見などを重視するように注意する。

治療

ほとんどは保存治療が行われ、手術治療はまれ。第5中足骨基部のジョーンズ骨折は骨癒合が悪い場所であるため、保存治療を行っても治りにくい場合には手術治療を行うことがある。
患部の固定・骨癒合の促進・筋肉の緊張緩和・痛みの軽減などを目的に、テーピング・ギプス・装具・包帯固定、松葉杖による免荷、アイシング(冷却)、低周波治療、温熱療法、手技療法などを行う。
次に、骨癒合や症状の状況に応じてストレッチング、筋力増強訓練などを加えて行う。

第5中足骨基部骨折(下駄骨折)

概要

足の甲には中足骨が5本あり、第5中足骨は小指の骨にあたる。第5中足骨の基部は、骨折を起こしやすい部分で、別名“下駄骨折”という。また、スポーツで発生することの多い第5中足骨基部の疲労骨折は、別名 “ジョーンズ骨折”という。

原因

足の捻挫と同じように、足を内側に捻って(内がえし)発生。
下駄を履いて足を捻った際に発生することが多かったため“下駄骨折”と呼ばれた。現在は、普通の靴でも発生するが、サンダルやハイヒールなどの高い靴で捻ると発生しやすくなる。

症状

歩行痛、足を捻ると痛い、腫張、血腫(内出血)などがある。

検査

X線検査で骨折がないか確認するが、中には転位が少ないものもあり、注意が必要。
上記のようなことを踏まえた上で問診・症状・臨床所見などを重視する。

治療

ほとんどは保存治療が行われ手術治療はまれだが、転位が大きい場合などに行われることがある。
患部の固定・骨癒合の促進・痛みの軽減などを目的に、ギプス・装具・テーピング・包帯固定、松葉杖による免荷、アイシング(冷却)、低周波治療、温熱療法、手技療法などを行う。
次に、骨癒合や症状の状況に応じて関節可動域訓練・ストレッチング・筋力増強訓練などを加えて行う。